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第1回
ファンファーストのモノづくり

中野渡 昌平

株式会社バンダイナムコエンターテインメント
経営企画室 事業開発部 マネージャー
人類遊び研究所 主任研究員

1999年に旧株式会社ナムコに開発職として入社。カラオケ向け「アフレコ!」やニンテンドーDS用ソフト「ぼくらのテレビゲーム検定 ピコッと!うでだめし」など数多くのゲーム企画・開発に携わる。


まずは率直な質問からお尋ねします。みなさんが新しいゲームを開発するにあたって、いつもこだわっているポイントや考え方などをぜひ教えてください。

中野渡:新しい遊びを生み出すときは、「これは面白い!」「こんなこと、できたらいいな」と心から思える「遊び、気持ちの核」になるところを見つけて、それを他の人に体験してもらうにはどうしたらいいかな、などと考えています。
例えば私が企画した「アフレコ!」(※1)は、登場人物になりきって普段は言わないようなドラマチックなセリフを言う体験ができたら面白いなと思って考えたものです。子どもの頃にヒーローごっこをしたり、ドラマを見た後にセリフを真似て言ってみたりしたような体験ですね。

アフレコ!とは?

2009年に登場、アニメなどの映像に合わせてしゃべったセリフを収録するという、登場人物や声優になり切って遊ぶことができるアフレコ体験サービス。JOYSAOUD f1、CROSSOの各カラオケで利用可能。

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アフレコ!: http://joysound.com/ex/utasuki/afrec/

先ほど私も初めて遊ばせていただきましたが、一人で楽しんでいるところを他人に見られるのは正直照れますね

中野渡:当初は他の開発メンバーからも「恥ずかしい」という意見がありました。ところが、アンケートをとってみると恥ずかしいのは収録をするときだけで、後で自分の声を聞くのは恥ずかしくない、むしろみんなでワイワイ聞くのは楽しかったという意見が多いことがわかりました。そこで、「どうやって収録前の恥ずかしさを軽減するか」が大きな研究テーマとなりました。恥ずかしさには、「仲の良い友だち同士なら恥ずかしくない」といった環境的な要因もあるのですが、実はシステムで解決できることもあるんですよ。

恥ずかしさをシステムで解決するというのは斬新な発想です。

中野渡:遊んでいる人をよく観察しているとキョロキョロする人がとても多かったんです。そのときの気持ちを尋ねてみたら、「これで合ってるんでしょうか?」「まだ遊び方を理解できていないのですごく不安です。」ということでした。当初は遊んでいただく前に、画面内に遊び方の説明を一度に表示していたのですが、どうも情報が多過ぎるせいであまり理解されていなかったようでした。
そこで、進行に応じた最小限の説明を少しずつ表示させる方法に変えることにしました。さらに表示する文字はできるだけ少なくして、必要がなくなったものは消去して視線の移動を最小限に抑えられるよう、画面全体の情報量を少なくしました。その効果はテキメンで、「説明を受けずに遊んでも楽しめた。」という声が増えるようになり、またイベント会場で設置した際にも主催者の方々から「お客様にぜひ遊んでいただきたいとおすすめできます。」と好評でした。
先ほどお話した、「仲の良い友人同士なら恥ずかしくない」というのは「お互いをよく知る」「理解し合う」からこそ生まれる効果ですが、これはシステムに対しても同じことが言えます。つまり、システムを理解できたユーザーは緊張や不安が払拭され、「楽しい」という状態に早くたどり着かせることができるというわけですね。

ナルホド、とても勉強になるお話です!

中野渡:それから、技術の向上よりも表現や友人との共感によって楽しさを得られることがわかりましたので、「さあ、がんばってクリアするぞ!」などというゲームではよく見られる演出は出さないようにしました。また、遊んだ後にはユーザーを評価する画面が表示されますが、上手か下手かという指標ではなくて話題作りのための少しとぼけたコメントをあえて出すようにしています。つまり「アフレコ!」は、途中から別の人がいきなり参加して遊んでも全然構わない、みんなでああだこうだと言いながらいろいろな遊び方で楽しめるように設計してあるというわけですね。
ユーザーのみなさんが、「こうやって遊んだら面白いかも?」と創意工夫するきっかけを前もってこちらから用意しておく、つまりユーザー自身が自分の手のひらで転がせる状態を作っておくのが大切なポイントなんですね。まず何よりも「楽しい」と思ってもらえるように、そのためにはどうすればいいのかを常に考えて物作りをしていく発想を、私たちは「ファンファースト」と呼んでいます。

まず楽しさありきで考えることがいい物を作る秘訣なんですね。

中野渡:バンダイナムコゲームスでは家庭用やモバイルゲーム以外にもアーケードゲーム(アミューズメント施設向けの業務用ゲーム機)を手がけていますが、アーケードゲームではユーザーへの動機付けをもっと短時間で行わなければいけないんですよ。売上を上げるためには、お店に入ったユーザーがゲーム機の前を通り過ぎるわずかな時間に「何だこれは?」というキャッチから始まり、「面白そうだな」「やってみようかな」「できそう」「よしやろう!」という気持ちになっていただく必要があるんです。
そのためにゲーム機のデザインや入力デバイスの形状、あるいはデモ画面で何を見せるかなどの工夫がいろいろと詰め込まれています。例えば、デモ画面ではすごく上手なプレイではなく、そこそこスキのあるデモをあえて再生するようにしています。

上手なプレイを見せたほうがずっといい宣伝になる気がしますが?

中野渡:デモを見たユーザーに、「これなら私でもできる!」と思っていただきたいのでわざとそうしています。あまりにも下手過ぎるデモだと見栄えが悪くなってしまいますが、逆に上手過ぎてもユーザーに高度なテクニックを要求される印象を与えてしまい、「こんなの私じゃできない!」と敬遠されてしまうんです。ですから、適度なバランスをとることが大切なポイントになるんですね。

長年のゲーム開発で得たノウハウを、現在はどのような方面で応用されているのですか。

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初期のデザイン

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改良後のデザイン

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中野渡:NTT東日本さんのタブレット端末で、画面表示やUIデザインのご協力をさせていただきました。お客様に笑顔を届けるインターフェースを、ユーザーのみなさんがタブレットを利用するきっかけ作りができるものを目指そうと考えて、まずは画面内の情報を整理することから始めました。

 また、タブレットを両手で持ったときにちょうど親指がある位置に矢印のマークを表示させて、ここをタッチすれば左右に画面を動かせるようにもしました。フリック操作でももちろんできるのですが、タブレットに不慣れな方だとフリックしろと言われてもピンとこないだろうと思いましたので、タッチ操作だけですべてが完結するようなデザインにしています。

ゲームのユーザー、特に子どもはマニュアルを読まずにゲームを遊ぶことが多いので、我々は普段からマニュアルを読まなくてもすぐ操作がわかるようにあらかじめUI設計をするんですよ。ここでもそのノウハウをうまく生かすことができましたね。

大人の私でも、ゲームソフトのマニュアルなんて事前に読むことなんてほとんどありません(笑)。

中野渡:タブレットを「家族のような存在にしたい。」というご要望がNTT東日本さんからありましたので、サービスとユーザーとの間にあたるデバイスの部分において、端末がどんな存在になるんだろう、ということを考えました。そこで、初めて起動したときには「はじめまして!」というメッセージが出てきたり、充電器で充電をする準備が無事にできたときにはユーザーを褒めたりお礼を言ったりするなど、その架け橋となるインターフェイスになるように考えた結果、短いメッセージでなおかつユーザーに対してポジティブなことを言う人間味のある演出を入れるようにしました。

ユーザーのみなさんが、自然と使い方または遊び方を覚えて楽しめるような仕掛けをあらかじめ用意しておけばいいということですね。

中野渡:例えば家電には10種類も20種類も便利機能が入っていたりしますが、実際に使いこなせているのはそのうち2〜3種類だったりしますよね?ですから家電においても、いろいろな機能をちゃんと使っていただけるように、手のひらで転がしてあげるようにすることが大切ではないかと思います。せっかく買ってもらった以上はちゃんと使いこなして自分のものにしていただきたいですし、開発側としてもがんばって作った物だからこそ、ユーザーにもその価値がしっかり届き、周囲の人に「この機能いいでしょ!」とついつい自慢してしまうような物ができればいいな、と思います。

インタビュアープロフィール

鴫原 盛之Morihiro Shigihara

1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。各種雑誌やWebサイトでの執筆をはじめ、
ゲーム開発の協力も行う。著書(共著)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)など。

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